とりあえずビール!!
今は、コロナになって居酒屋に行って、そう発言する機会もなくなりましたが、宅飲みでもとりあえずビールで晩酌という日本人は多いと思います。自分も月に2~3回お酒は飲みますが、ほぼビールのみです。だいたい、キリンののどごし生か最近なら本麒麟を好んで飲み、少し贅沢したいときにサントリーのプレミアムモルツを飲むというのがルーティンです。
こんなにも身近なアルコールなのに正直言ってよく知らない・・・ってのが現状でした。今回紹介する本を読めば、さらにビールの魅力が高まり、もっといろいろ知りたくなったし、世界のビールや日本のクラフトビール飲んでみようかなと感じました。
スタイル
ビールの種類を日本ではタイプと使うことが多いが、世界的に見るとスタイルと呼ぶのが主流。大きく分けて「エール(上面発酵」、「ラガー(下面発酵)」、「自然発酵ビール」の3つに分けることができる。さらに発祥国や色、度数、苦み、香りなどにより細かく分類され、150を超えるスタイル分けがあるそう。
常温に近い温度で発酵する香り高い「エール」と、低温で発酵するすっきりした「ラガー」に大きく分けられる。
基本原料
ビールは麦酒と書かれるように、麦を原料とした醸造酒で、ほかの原料としてはホップ、水、酵母がある。これらの組み合わせと分量によって、ビールはできる。しかし同じ麦芽と同じ水と同じホップを使っても、酵母が変わればまったく違った香りと味わいおビールに仕上がる。スパイスやフルーツ、コーヒー、チョコなどを使うことによって、個性的なビールもできる。
麦芽(モルト)
麦を発酵させたもの。麦から麦芽をつくる目的は、麦に含まれるデンプンやたんぱく質を糖やアミノ酸に分解するための、酵素を生み出すこと。糖は酵母に食べられ分解されることで、アルコールと二酸化炭素(炭酸ガス)になる。アミノ酸は酵母が生きるための必須栄養素。
ベールモルト
基本の麦芽で、淡色麦芽と呼ばれる。時間をかけ低温で乾燥。多くのビールで使用。
ウィンナーモルト
色麦芽。ペールモルトよりやや高温で乾燥。赤みがかった色みと、ナッツのような香ばしさが特徴。
チョコレートモルト
色麦芽。チョコレートのような色。ウィンナーモルトと同じくナッツのような香り。
ウィートモルト
小麦の麦芽。たんぱく質を多く含むためビールを白濁させる作用。泡持ちもよくなる。
カラメルモルト
色麦芽。麦芽に水を含ませてから乾燥。カラメル香の強い、甘みのあるビールに。
ブラックモルト
色麦芽。高温で焦がしたもの。黒ビールなどに使われる。
ホップ
つる性の植物。役割はビールに特有の苦みと爽快な香りを与える。ビール醸造には主に未受精の雌株の花を使う。これを「球花(きゅうか)」と呼ぶ。ビールに特有の苦みや香りを生み出す成分は、この球花の中の「ルプリン」と呼ばれる器官内にある。
さらに泡の形成や泡もちをよくする作用や殺菌効果がある。
ホップは商取引において、「ファインアロマホップ」、「アロマホップ」、「ビターホップ」の大きく3つに分けられるが、信州早生(日本)、ソラチエース(日本)、ネルソンソーヴィン(ニュージーランド)のようにいずれの分類に属さないものもある。
ファインアロマホップ
アロマやビターに比べ穏やかな香り。
アロマホップ
ファインアロマに比べ強い香りを持つ。
ビターホップ
ファインアロマやアロマに比べ苦みが強い。
水
ビールの原料の9割以上が水。ビール醸造には、CaやMgなどのミネラル成分が適度に含んだ水が適している。ミネラルの総濃度を示したものを水の硬度といい、高いものを硬水、低いものを軟水と呼ぶ。一般的に濃色ビールには硬水、淡色びーるには軟水が適しているといわれる。
ミュンヘン地方は硬水であるため、ミュンヘナーなどのコクのある濃い色のビールができた。日本の水はほぼ軟水であるため、多くのメーカーによって作られるピルスナーに最適。
副原料
日本では、酒税法においてビールの副原料として使用できるものを「麦その他政令で定める物品」として定めている。
・麦(大麦のほか、小麦、ライ麦など)
・米
・とうもろこし
・デンプン(コーンスターチなど)
・着色料(カラメル)
・果実および香味料(香辛料、ハーブ、野菜、茶、ココア、鰹節など)
酵母
ビール醸造に用いられる酵母は直径5~10ミクロンの微生物。各ビールメーカーは数百から数千の酵母をストックし、ビールスタイルに合わせ最適な酵母を選択する。
上面(エール)発酵酵母
発酵温度は15~25℃。発酵期間は3~5日と短い。副産物が多く、バナナに似たフルーティーな香りがするエステルが豊か。奥深い味わい。発酵中にブクブクと表面に酵母が浮かんで層をつくる。
下面(ラガー)発酵酵母
発酵温度は約10℃。発酵期間は6~10日と長い。シャープな飲み口。発酵タンクの底に酵母が沈む性質を持つ。上面発酵酵母は紀元前6000年に発見されたが、下面発酵酵母の発見は15世紀と新しい。
ビールの歴史
古代
ビールの誕生
ビール醸造の最古の文字記録は、B.C3000年頃のメソポタミアのシュメール人。
当時のビールはシカルと呼ばれた。しかし、メソポタミア、エジプトの両文明とも、文字の発明以前にビールが存在していたので、どちらが発祥かは不明。
ゲルマン民族大移動
古代ゲルマン人にビールは必需品。砕いた麦芽を鍋で煮て麦汁にし、自然発酵しビールを作っていた。ワインを愛するローマ人からは野卑な飲み物とされていたが、4世紀後半ゲルマン民族の大移動とともに、ヨーロッパ全体に広がっていく。
中世
キリスト教の布教とビール
8世紀後半にカール大帝がゲルマン民族の大移動で混乱した西ヨーロッパを統一。征服した土地に教会や修道院を建て、キリスト教を広める。このとき定められた荘園令で、荘園や修道院にワインまたはビールの醸造が義務づけられ、ビールはワインと同等の地位を得る。
近代~現代
ラガービールの登場
中世のビールは腐敗が少ない冬に行っていたが、15世紀のバイエルンで、低温で発酵する事例が発見され、天然氷とビールを洞窟で春まで貯蔵(ラガー)する方法が生まれる。初めて下面発酵が使用されたが、この時は酵母ではなく、貯蔵法の違いが発酵の進みを変えると思われていた。19世紀後半の細菌学者パスツールによる発見で酵母の違いと分かる。
ビールと日本
文献にビールが登場するのは、江戸幕府8代将軍吉宗の時代。初めてビールを醸造したのは幕末の蘭学者、川本幸民といわれる。
国内初のビール醸造所は1869(明治2)年、横浜に開業したジャパン・ブルワリー。しかしまもなく廃業。翌70年にアメリカ人コープランドが横浜山手123番にブルワリー創立も84年に倒産。その跡地にトーマス・グラバーの尽力で、ジャパン・ブルワリー・カンパニーが設立し、85年に「キリンビール」を発売。このとき、日本人株主は三菱財閥の岩崎弥之助ただひとり。
76年には、札幌に開拓使麦酒醸造所が創設、77年「サッポロビール」が発売。東京では90年に「エビスビール」が発売。92年に「アサヒビール」が発売。
4大ブランドが台頭する中、経営が厳しくなった中小企業は次々に廃業、一時100社を超えた会社も1901(明治34)年のビール税が施行されるころには20社程度に。
1906(明治39)年、日本麦酒(エビス)、札幌麦酒(サッポロ)、大阪麦酒(アサヒ)の3社が合併。国内シェア70%という日本最大のビール会社、大日本麦酒株式会社を設立。東日本はサッポロ、関東はエビス、西日本はアサヒというエリアブランドが成立する。
WWⅡ下の1940年、食料確保を優先するため、清酒は40%、ビールは副原料の米の使用量を減らし15%減産。6月には配給制が実施。戦前、ビール販売は都市部中心だったが、配給制度がビールを全国に広めたといわれる。
戦後、麒麟麦酒と、大日本麦酒から分割した日本麦酒(後にサッポロビールに改名)、朝日麦酒の3社に加え、1959(昭和34)年にオリオンビール、63年にサントリーが参入し今日に至る。
地ビールからクラフトビールへ
戦後日本のビールづくりはキリンやアサヒ、サントリーなど大手メーカーの独占状態にあった。小規模な醸造が認められるようになったのは、1994年のこと。
「規制緩和」がビール業界にも及び、最低製造量が2000klから60klへ大幅に引き下げられた。以後、全国各地に小規模な醸造所が誕生し、「地酒」のネーミングにあやかり、「地ビール」と名付けられ大ブームに。しかし、中には質が伴わないブルワリーもあり、また大量生産できないことから割高になり、地ビール=マズくて高いという認識が広まる。ブームが去り、多くの醸造所が廃業になるなか、本当に美味しいものを作り続けてきたのが、現在も活躍しているブルワリー。
2000年代半ば以降、負のイメージもある「地ビール」から、職人がつくる工芸品を連想させる「クラフトビール」へと呼称を変える。