本好きナースマン

色んな本を読んで日々の生活に潤いを与えています。目指すは年間100冊読了。

全国2954 峠を歩く  中川健一

著書の中川さんは東京出身。國學院大學を卒業後、岡部株式会社に入社し、営業として活動。建築技術を一から学び始め、一級建築士を初め、国家資格を取得。

2008年から峠をめぐり始め、10年間でなんと全国2954の峠をしたそう。

この著書が2018年刊行なので、さらに増えているかもしれません。

 「峠」とは??

山へんに上る、下ると書いて峠。まさに峠のために存在している漢字と言っていい。

これは日本独自の漢字「国字」である。

峠の語源は万葉集に「多武気」と出てくるように、当初は「たむけ」と呼ばれていた。もともと峠には道の神がいると考えられ、峠を通行する者が峠越えの安全を願って神に物を供えていたから。「たむけ」とは「手向け」で、神に供える意味がある。

平安時代後期から和歌や書物で、「たむけ」の変化形である「たうげ」が盛んに使われるようになり、さらに「とうげ」に変化した。

峠は3つに大別でき、物流の峠、軍事の峠、信仰の峠に分かれるという。

日本には約3773の峠が存在するという。日本に峠が多い理由は、日本に住んでいるとなんとなく分かるが、南北2000kmに及ぶ形状は、海峡により4つの島に分断。中央部を走る脊梁山脈が、北は北海道から南は九州まで各地域の中央部分の東北・西南方向に連なっていることで、平野は海岸線沿いの狭いスペースしかない。日本で広いと言われる平野は5つ(石狩、関東、濃尾、大阪、筑紫)で、それ以外は一方は海、三方は山。みたいな山間盆地のような形が多い。そのため、隣町に行こうとすれば、必ず「峠」を越えなければならない。

日本の地形 | NHK for School

日本の地形 | NHK for School

中学校の時とかはよく山脈の名前とか覚えた記憶がありますね。この地図を見てもわかるように、中央部にはどこも山脈が連なっている。日本人にとっては、まさに山越えは生活の一部であり、まさに物量の峠として活躍することもあれば、この地形を生かし、戦乱時代には有効に活用されたのが想像できる。

 

著者は本作の中で、厳選峠33、絶対行きたい峠120を主に紹介している。

石川さゆりさんの「天城越え」や文豪、川端康成の「伊豆の踊子」などにも登場する『天城峠』。

囚人道路とも言われる『北見峠』。国道333号線、通称遠軽道路と呼ばれ、この道の最大の難所が北見峠。明治時代、ロシアの侵攻を恐れており、そのために急いで道路を作る必要があったが、資金難であった日本政府は、網走刑務所の囚人を利用することを決めた。約1100人の囚人と200人の職員によって作られたという。

岩見銀山から銀や銅を運んだ道として知られる『赤名峠』。出雲国風土記にも登場するくらい歴史が古い。

などなど1つの峠にも多くの歴史が存在するという事を認識させられる。この本を読みと日本全国色んな所に旅したくなる。そんな気持ちにさせてくれる1冊でおススメです。

 

個人的に、北海道にも美しい景色の峠はあります。今でこそ、釧路ー札幌間に高速道路が概ね開通したので、高速を利用しますが、10数年前は一般道路を気合と根性で走っていました。2時間くらいは違うので、高速が遥かに楽です。ですが、間にある日勝峠。それを札幌から釧路方面に向かう峠の下り途中から見える十勝の景色は本当に素敵です。途中に展望台もあります。

また、冬季の間は通行止めとなる知床峠。こちらは天気がいいと頂上から国後島が見えたりします。訪れた時は天気が悪く何も見えませんでしたが・・・

www.mapple.net

他にもたくさんおススメの峠があるようです。