本好きナースマン

色んな本を読んで日々の生活に潤いを与えています。目指すは年間100冊読了。

彼女たちのいる風景  水野梓

今回紹介する水野さんは東京生まれ。

早稲田大学卒業し、オレゴン大学を経て日本テレビに入局。

社会部デスクを経て、国際部デスク。系列の新聞社で医療・社会保障・教育の編集委員も歴任された。

 

高校時代から仲の良かった、凛、美華、響子。

それから時間は流れそれぞれが38歳になった。

出産後、マミートラックに追い込まれた凛。シングルマザーとして発達障害の子供を抱え、貧困から抜け出せずにいる響子。昇進しながらも不妊治療がうまくいかない美華。

3人は今でも月1回のランチ会で愚痴をこぼす仲、それでストレス解消をしていた。

しかし、いつの間にか本当の悩みは避けるようになっていた。

物語としては3人の目線から見える世界を主観的に展開していく。

同じ場面なのに、他の人生を羨ましく思ったり、妬んだりしてしまっている自分。でも、実はお互いがお互いを羨ましく思っていたりする。自分はこんなに辛いのに・・・と。日常でもあると思う。みんな自分はこんなに辛いのに、あの人は笑顔で幸せそうとか、悩みなんてないのでは。とか思うこと。でもそれって本当?その人の本当の部分て誰にも分らない。そういった部分をみんな必死で隠しながら一生懸命生きている。

女性という部分で考えれば特に、周囲を気にしたり、周囲の話をしたりといった事は男性もよりも多いし、仲間やグループといったものに所属しなければいけないような雰囲気があって、それはおそらく小学生の頃くらいからすでに存在していて、上手く立ち回らなければいけない煩わしさみたいなものが常につきまとっている。

3人も仲はいいけど、なんとなくどこかで妬みや嫉妬のようなものを抱えながら共存している。そして、3人が抱える問題がマミートラック(出産後に部署の移動など希望しないところに移動させられる)、シングルマザー、不妊治療と現代の女性が抱える問題を取り上げている。とても考えさせられる作品。

そもそもそうした問題がはびこっている世の中であるから、女性が結婚する、子供を産むという選択を敬遠しがちなのだ。男も女も一生懸命勉強する。そして行きたい大学に進学する。ただ、赤ちゃんを産んで戻っただけなのに、なぜ希望もしない部署に異動させられるのか、不妊治療の問題においても非常にデリケートな問題であって、やはりまだ声を出して職場に言いづらいし、言ったところで理解を得られるのかもわからない。

そして不妊の原因については男女半々くらいといわれるのに、なんとなく女性の方に問題があるのではという風潮や男性が受診を拒否するケースなど。

はっきりいってどんなにどうあがいても今の世の中であれば、出生数が増加に転ずることはないし、未婚のまま一生を終える人も増加する。それだけ、結婚への旨みやメリットがない。もちろん、個人的には結婚しているし、不妊治療の末、2子に恵まれた。夫婦共働きで、大変だと思う事も多いし、子供にイライラさせられることもあるけれども幸せも多い。だけれども、女性がそうした問題をクリアしながら正規雇用のまま働くためには男性のさらなる覚悟も必要だと思う。家庭はリラックスできる場であっていいと思う、だけれでも妻があくせく家の事をしているのなら、手伝うという目線ではなく、自分の事をするべきである。風呂あがりはビールを飲みながらWBCを見る。最高ですよね。でも、子供が小さいなら考えてみてほしい。子供が寝るまでにやらなければいけない事がたくさんあることを。子供が寝た後に録画したものを見ながらビールを飲むことももちろんできるわけで。。。

生物上、赤ちゃんを産むという行為は女性にしかできない。しかし、それ以外の事は男性にできる。自分の親はそんな事をしなかったとかそういう事はすべて後付けの言い訳。どれだけ、男性が家庭内で協力できるか、そして家事・育児の大変さを理解し子育て期を過ごした男性がもっともっと世に溢れれば、少なくとも10数年後の会社の上司には理解ある男性や女性が増えると思う。そうすれば若い世代も少しは考え方も変わると思う。世の専門家もこの数年が増加に転じるリミットだとおっしゃっているが、正直、小手先の政策ではどうにもならない所まできているので、ある程度人口が減少し、そこから維持、増加できるかという方向にもっていくしかないと思う。

 

極端な話、ある女性が大学卒業し、希望する会社に内定しました。

もちろん、夢や希望を抱いて仕事に向き合いたい気持ちはわかります。

そうした中、まず会社としてはこの女性がどういうライフプランを考えているのか、結婚願望や出世なのかを聞き取りし、仮に結婚願望や赤ちゃんを産みたいと考えている女性に対してどう配慮するか。本当はこの部署で働きたいけど、残業も多くて、結婚が遠のきそう・・と不安があるならまずは違う部署で残業も少ない部署からはじめ私生活の充実にあててもらい、赤ちゃんが生まれ、ある程度、落ち着いたら希望する部署にとか会社や人事の最大限の政策を行い、国もバックアップする。もちろん大手や中小企業も。。。中小ではなかなかそうはいかないでしょうが・・・

これくらいの事を行って女性の最も出産の可能性が高い時期をどうするか。これくらいの事を国や会社や男性が理解し、覚悟をもってやるぞ。くらいの事をしなければ日本はもう衰退の一途でしょう。ものづくりの日本はものを作る力も途上国に抜かれ、経済力でもアメリカや中国に及ばない。

なんだかだらだらと色々と述べてしまいましたが、この1冊を読んだだけで、現代の大きな問題を考えるきっかけになりましたし、本作の場合には、3人の友情も凛が癌を患い余命1年余りという宣告を受けたことで3人の仲にも変化が生まれ、本当の意味でも仲良くなったのではないかと思うし、いい作品だったと思います。