本好きナースマン

色んな本を読んで日々の生活に潤いを与えています。目指すは年間100冊読了。

#殺人事件の起きないミステリー  

このミステリーがすごい!大賞シリーズ傑作選で

岡崎琢磨さん、小西マサテルさん、塔山郁さん、友井羊さん、柊サナカさん。

5名の作品が掲載。

・岡崎琢磨さん(珈琲店タレーランの事件簿シリーズが有名)

ビブリオバトルの波乱】

ビブリオバトルとは一言でいうと本のプレゼンの競技大会。その全国大会で起きたミステリー。発表順の紙に3と4が2枚あるという事件。事件を起こしたのは誰か?その目的は?

 

・小西マサテルさん(主に放送作家として活躍。99のオールナイトニッポンなど)

【緋色の脳細胞】

孫と祖父の話。祖父はレビー小体認知症を発症している。そんな2人の本にまつわる事件の話。

 

塔山郁さん(毒殺魔の教室など)

【知識と薬は使いよう】

認知症の祖母の薬が時々なくなることがあるという相談を同僚のくるみから受けた爽太。薬剤師のミスでもなく、祖母にも母が飲ませているので、間違えることはない。くるみの家族は祖母、母、父、くるみ、弟の5人家族。

薬剤師の毒島さんは爽太からの話を聞いて、犯人の見当がつく。犯人は誰なのか?その目的は?

 

・友井羊さん(スープ屋しずくの謎解き朝ごはんシリーズが有名)

【ふくちゃんのダイエット奮闘記】

福田三葉は昔からふくちゃんという愛称で親しまれていた。しかし、本人は自身の体系がふっくらしているため、ふくちゃんがふっくらと言われているようで好きではなかった。そんなふくちゃんは昔、思いを寄せていた人を含めた友人と再会し、ダイエットをしようと決意。しかし、友人の繭子などをはじめ、みんなが甘いものをやたらと勧めてくる。どうして痩せさせないようとするのか?その真意は。この物語の中にスープ屋しずくも登場。

 

・柊サナカさん

【暗い部屋で少年はひとり】

今宮写真機店で働くようになった来夏。そんなお店に古田という少年がくる。古田は写真をとるのが好きで今宮とも話が合う。しかし、カメラに没頭し、模試の成績が少し落ちたと古田の母が怒鳴り込んでくる。カメラも捨てられた古田。その後、部屋の中は荒れ、真っ暗な部屋の中にいるという。古田はどうなってしまったのか?

 

どれも読みやすくて面白かったですが、個人的に塔山さんと友井さんの作品を読んでみようと思いました。

 

そしてあなたも騙される  志駕晃

志駕さんといえば、「スマホを落としただけなのに」のシリーズで有名で映画にもなった作品。

今回の作品も表紙にインパクトがあり、絶対に面白そうと思わず一気見。

目次としては騙される人、騙す人の2章のみ。

夫のDVを逃れ、7歳の娘を育てるシングルマザーの貴代。貴代のもとに届いたのは、滞納家賃の催促状、親戚にも街金にも借金を断られ、たどり着いたのはSNS上で客を集める個人間融資の「ソフト闇金」。貴代は「未奈美」名乗る見知らぬ貸主から親切にお金を借りることができ、子育ての相談にも乗ってくれる。しかし、そのやさしさとは裏腹に、貴代の借金はどんどん増えていく。

騙される人編では貴代と未奈美の関係が中心で、いわば騙される人物の中心は貴代である。どんどん追いつめられていく貴代。未奈美は優しいふりをしているだけで、借金を増やし、風俗への斡旋を行うことが目的だったのか。そして未奈美という人物は誰なのか?

 

次章の展開を読んでいると、未奈美のもとで貴代が働きだしており、貴代も未奈美よ同じような個人間闇金を行うようになった。という展開になっている。師長という言葉が出てくるがこれは未奈美のことかなと進んでいると、後半に進むにつれて何か違和感を感じ始める。そして、クライマックスに近づき、全ての謎が明らかになるが、完全に作者に騙されました。二度読みしました。非常に面白かったです。

 

ぼくは明日、昨日のきみとデートする  七月隆文


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2014年に刊行された本作。

京都の美大に通う南山高寿は電車で一目ぼれをした。意を決して彼女に声をかけ、交際することに。可愛くて、気配りもできる。彼女の名前は福寿愛美。

彼女はさみしがり屋で嬉しいことがあるとすぐに泣く。

そんな愛美との交際は幸せな時間であったが、時々不思議に感じることもあった。そして、ついにその真相を知ることになる。

奇跡の運命で結ばれた2人を描く、甘く切ない恋愛小説。

彼女の秘密を知るとき、不思議に感じる正体もわかり、そして、どうして彼女が寂しがっているのか、すぐに泣くのか、全てがつながる。

 

2016年には、福士蒼汰小松菜奈主演で映画にもなっている。

 

雲の階段(上)(下)  渡辺淳一

私が勤務している病院に応援医師として東京から来られる先生がいる。

その先生から雲の階段面白いから是非読んでみてと勧めてもらった。

さっそく読んでみた。

【上】

相川三郎という人間が東京での生活を離れ、離島での生活を選んだ。三郎は医療事務として働く傍ら、僻地医療という問題に直面する。医師がいない、放射線技師や検査技師もきちんとした有資格者がいないという現実。三郎は器用で物覚えもよかった。医師で所長である村木はそんな三郎を可愛がった。そして、器用であることをいいことに、技師や検査の仕事をさせたり、助手として手術にも入るように。そして・・・自分自身が執刀することも。所長は責任は俺が持つ、俺に何かあったらこの島の住民の命は誰が守るんだと三郎に教える。

言っている事は正論かもしれないが、している事は間違いなく犯罪行為である。

実際にこんな事が僻地で行われているかという問題についてはよく分からないが、読んでいるともしかしたら本当にあるのかもしれないと感じるようにもなる。

所長以外の看護師やスタッフは冷ややかだが、孤立する三郎を看護師の明子は支えてくれた。そして、三郎も手術をこなすうち、自信を少しずつつけていく。

そんな島での生活を過ごしているある夏の日、女子大学生が腹痛を訴え、運ばれてくる。ショック状態。所長は東京での所用にて不在。所長はおそらく子宮外妊娠ではないかと疑い、緊急に手術をするしかないと迫られる。

命に直結する大手術。簡単な手術しかこなしたことのない三郎は悩む。しかし、時間がない。意を決して三郎は手術をする。一命を取り留めた女子大生、それは運命の悪戯か亜希子という女性であった。そして、その亜希子に好意をもってしまう三郎。

亜希子の父は東京で医師をしている。貧乏だった三郎は美人である亜希子とその恵まれた生活にあこがれる反面、いつ医師ではないとばれる恐怖におびえつつも嘘を突きとおす。そして、亜希子と結婚へ

 

【下】

結婚をするにあたり、三郎は明子と別れなければいけないと判断し、嘘をついて島を離れることにする。そして、母と妹、親戚にも嘘を重ねる。もちろん亜希子を始めとする家族にも・・・

なんとか乗り越えた三郎は亜希子の父の病院で働きはじめることになる。しかし、民間病院の実態や金持ち優遇の方針をとっている経営方針に三郎は不満をつのらせる。そんな頃、明子は自殺を図る。そして、三郎自身も医師免許の報告をしなければいけないなど、いよいよピンチが迫る。最後に三郎が決断した結末はいかに!?

 

上下巻という事であったが、一気に読み切った感じである。内容も医療分野についてだったので、面白かったし、ストーリー性としても良かった。が、しかし、三郎という人間については納得はできない。物語の展開は三郎の1人称で進んでいくが、自分という人間の意思はどこにあるの?という感じ。上の者がいうからしている、下の者には強く出る、困った時には言い訳をして、さも向こうの方が悪いかのように自分を正当化する。自分は被害者のようなていで話は進んでいくが果たしてそうなのか?

所長がやれと言ったから、手術もしている。

たしかに悪いことをしているけど、町の人の助けになっているかしょうがない。

明子は自殺未遂するほど、三郎をきちんと愛していたのに、さも相手が好きになってきたのだから、しょうがないとか、亜希子との生活がしんどくなってきたら、明子との生活がよかった。

亜希子はわがままなところがあるし、父の病院のやり方も気に食わないと言っていたが、そもそも無資格の三郎に言う権利はないのでは。

などなど、どちらかというと周囲の人間は三郎に巻き込まれたという印象を受けた。そして、そんな三郎が最後に出した決断にも、えってなったし。なかなか自分勝手な人間だという印象でした。

 

医療の作品であるが、1人の人間の生き様をある種、反面教師で読んでいる自分がいた。

 

 

 

鈍感力  渡辺淳一

鈍感な人。と言えば、目に見えない空気のようなものを感じ取ることが苦手で、察することができないというイメージ。しかし、渡辺さんはこの鈍感という事をいい意味で捉え、色んな場面において鈍感であるべきと語っています。

 

些細なことで揺るがない「鈍さ」こそ、最も大切で、源になる才能だと説き明かす。

恋愛、夫婦、子育て、職場、環境適応能力・・・様々な場面で求められる鈍感力とは?

 

1997年に発効した『失楽園』は映画、テレビでも放送され大きな話題になり、ミリオンセラーともなった。テレビの古谷一行さんと川島なお美さんの場面は鮮烈だった印象がある。

 

白銀の逃亡者  知念実希人

ドナルド・ミュラー症候群(通称:DoMS)

2016年に世界的に大流行した。日本でも感染したものの致死率は95%を超え、高度医療を受けられない国での死亡率は100%。

数週間の急性期を乗り越え、病状が急激に回復する変異期に入り、ヴァリアント(変異体)となる。ヴァリアントはホルモン変化により、虹彩が白銀に変化し、通常の人類を遥かに凌駕する運動・感覚能力を獲得するが、同時に紫外線に対して強いアレルギー反応を示すようになる。

 

岬純也もまた、DoMSに罹患した。罹患した患者は、憩いの森という施設に強制隔離されるが、岬は素性を隠し、医師としてこっそり生活をしていた。

いつものように夜間の救急病院で診療をしていると、岬に診察をしてもらいたいという、悠という少女と出会う。その悠もまたヴァリアントであった。悠は憩いの森から脱走し、公安に追われていた。純也は悠からある計画を打ち明けられる。

そして純也は、彼らの生存をかけた闘いに巻き込まれていく。

悠やその兄、比呂士、そして比呂士の計画に賛同し、協力するヴァリアントと同志の人間たちの計画とは?

 

コロナが世界的に大流行し、日本でもコロナ患者が出始めた頃、差別的な発言や言動は多くの所で聞かれた。今でこそ、元の生活に戻りつつあるが、本当の世界とこの本の中身がリンクすることが多くに非常に考えさせられる内容になっていた。

 

鈴木比呂士(悠の兄)がDoMSが流行りだし、ヴァリアントになったとき、少女を強姦し、警察官を殺したという報道が流れる。人々はその情報によってヴァリアントは危険で凶暴だというイメージが植え付けられた。そのため、憩いの森という場所に強制的にバリアントは集められることになった。

国が人間とヴァリアントを分けるという方法をとったのだ。

比呂士は本当に強姦をしたのか?警察をどうして殺したのか?その真実が明らかになるとき、悲しくも切ない。そして、怒りなど色んな感情が沸き起こる。

そして、これは本当の世界でも十分にあり得ることだとも思えた。

医療×エンタメ。知念ワールドに引き込まれる作品です。

 

漂流都市  嶋戸悠祐

東北第2の都市K市。

K市には轟家電という電気屋がある。全国に展開する大手家電が出店しても半年も経たず撤退を余儀なくされる。

轟家電にはフロアの広さに合わないほどの店員がいて、そして利用しているほとんどが高齢者。

町の高齢者率はなんと85%を超える。

轟家電、そしてK市に隠された秘密とは??

 

借金を抱えることになった人々が漂流され、K市に流れ着き、そこで働く。時透や中山、寺崎など漂流した人物たち、そして高齢者は他の町からK市特有の優遇措置があり、不気味ながらもその破格の優遇に魅了され移住する。

轟家電が他社を寄せ付けない一強でいる秘密が徐々に明かされ、そして町の秘密も明らかになっていく。

結末は絶望するような秘密が隠されていた。

 

この作品には現代社会が抱える高齢化という切実な問題に対して、驚くような切り口で攻めている。現実問題として、本作品のような結末はあまり望ましいとは言えないが、しかし、この超少子高齢化の日本において、間もなく迎える2025年問題が迫っている。第2二次ベビーブーム世代が高齢者に突入し、高齢化率30%を超えるとも言われる日本。そんな日本を支える政治家の多くも高齢者。パーティー券などの問題や不祥事の数々、岸田首相の打ち出す政策も世間の思いとはかけ離れているようなものばかり。日本はこれからどうなっていくのだろうか。1人1人が真剣に考えなければならない。