復讐したい
「復讐法」のルール
①場所は太平洋上の孤島、蛇岩島(じゃがん)に限る。
②制限時間は100時間。
③遺族には、武器と食料とGPS等が与えられる。
④犯人は丸腰で、位置情報を知らせる発信機を装着。
⑤ここでは、誰が誰を殺しても罪にはならない。
⑥10時間ごとに、犯人の立ち入り禁止エリアが増える。
⑦立ち入り禁止に入った犯人は無抵抗状態で復讐を受ける。
⑧100時間以内に復讐が果たせなければ、犯人は無罪放免となる。
参加者/復讐を実行する者
⚫妻を殺された男。
⚫毒ガス無差別テロで家族を殺された遺族団。
⚫20年間、監禁されていた女。
参加者/復讐を受ける者
⚫家庭ある女を殺した男。
⚫テロを起こしたカルト教団の教祖と、その信者たち。
⚫少女を拉致、20年間監禁した男。
2001年のデビュー作『リアル鬼ごっこ』は、発売直後から評判を呼び、ベストセラーに。
『復讐したい』は2011年4月に刊行されたが、舞台は2020年(昨年)である。2019年に『復讐法案』という法律が可決され、被害者遺族は加害者に報復できるというものだ。参加者たちはそれぞれ、別の事件での加害者、被害者であるが、全くの無関係という訳ではなく、話が進むにつれて、関係性が見えてくる。途中、残虐なシーンもあるが、どこか同情できるところもある。自分自身が愛する家族の命を奪われた時、どうするか。だめだと分かっていても仇をとりたいと思う気持ちが本音だと思う。
しかし、法律がある以上、理性がある限り、現実的には裁判を起こし、出来る限り罪を重くするために戦い、長い時間をかけて加害者に罪を償ってもらうしかないのが現状である。この作品はある意味で心の中で叶えたい人間の本心の部分を可視化し、法律で裁いてもいいとしたのだ。
もちろん、被害者遺族が圧倒的有利な状況ではあるが、加害者にも救済の道はある。そうした状況を、ある種ゲームのようなものにして展開するストーリーは一気読みしたくなるほど展開性もある。
山田悠介さんの作品は知っていたが、きちんと読んだことがなかったが他の作品も今後読んでいきたいと思う。