本好きナースマン

色んな本を読んで日々の生活に潤いを与えています。目指すは年間100冊読了。

雲の階段(上)(下)  渡辺淳一

私が勤務している病院に応援医師として東京から来られる先生がいる。

その先生から雲の階段面白いから是非読んでみてと勧めてもらった。

さっそく読んでみた。

【上】

相川三郎という人間が東京での生活を離れ、離島での生活を選んだ。三郎は医療事務として働く傍ら、僻地医療という問題に直面する。医師がいない、放射線技師や検査技師もきちんとした有資格者がいないという現実。三郎は器用で物覚えもよかった。医師で所長である村木はそんな三郎を可愛がった。そして、器用であることをいいことに、技師や検査の仕事をさせたり、助手として手術にも入るように。そして・・・自分自身が執刀することも。所長は責任は俺が持つ、俺に何かあったらこの島の住民の命は誰が守るんだと三郎に教える。

言っている事は正論かもしれないが、している事は間違いなく犯罪行為である。

実際にこんな事が僻地で行われているかという問題についてはよく分からないが、読んでいるともしかしたら本当にあるのかもしれないと感じるようにもなる。

所長以外の看護師やスタッフは冷ややかだが、孤立する三郎を看護師の明子は支えてくれた。そして、三郎も手術をこなすうち、自信を少しずつつけていく。

そんな島での生活を過ごしているある夏の日、女子大学生が腹痛を訴え、運ばれてくる。ショック状態。所長は東京での所用にて不在。所長はおそらく子宮外妊娠ではないかと疑い、緊急に手術をするしかないと迫られる。

命に直結する大手術。簡単な手術しかこなしたことのない三郎は悩む。しかし、時間がない。意を決して三郎は手術をする。一命を取り留めた女子大生、それは運命の悪戯か亜希子という女性であった。そして、その亜希子に好意をもってしまう三郎。

亜希子の父は東京で医師をしている。貧乏だった三郎は美人である亜希子とその恵まれた生活にあこがれる反面、いつ医師ではないとばれる恐怖におびえつつも嘘を突きとおす。そして、亜希子と結婚へ

 

【下】

結婚をするにあたり、三郎は明子と別れなければいけないと判断し、嘘をついて島を離れることにする。そして、母と妹、親戚にも嘘を重ねる。もちろん亜希子を始めとする家族にも・・・

なんとか乗り越えた三郎は亜希子の父の病院で働きはじめることになる。しかし、民間病院の実態や金持ち優遇の方針をとっている経営方針に三郎は不満をつのらせる。そんな頃、明子は自殺を図る。そして、三郎自身も医師免許の報告をしなければいけないなど、いよいよピンチが迫る。最後に三郎が決断した結末はいかに!?

 

上下巻という事であったが、一気に読み切った感じである。内容も医療分野についてだったので、面白かったし、ストーリー性としても良かった。が、しかし、三郎という人間については納得はできない。物語の展開は三郎の1人称で進んでいくが、自分という人間の意思はどこにあるの?という感じ。上の者がいうからしている、下の者には強く出る、困った時には言い訳をして、さも向こうの方が悪いかのように自分を正当化する。自分は被害者のようなていで話は進んでいくが果たしてそうなのか?

所長がやれと言ったから、手術もしている。

たしかに悪いことをしているけど、町の人の助けになっているかしょうがない。

明子は自殺未遂するほど、三郎をきちんと愛していたのに、さも相手が好きになってきたのだから、しょうがないとか、亜希子との生活がしんどくなってきたら、明子との生活がよかった。

亜希子はわがままなところがあるし、父の病院のやり方も気に食わないと言っていたが、そもそも無資格の三郎に言う権利はないのでは。

などなど、どちらかというと周囲の人間は三郎に巻き込まれたという印象を受けた。そして、そんな三郎が最後に出した決断にも、えってなったし。なかなか自分勝手な人間だという印象でした。

 

医療の作品であるが、1人の人間の生き様をある種、反面教師で読んでいる自分がいた。