風のマジム 原田マハ
沖縄生まれ、沖縄育ちの伊波まじむは、東京の大学卒業後、沖縄に戻り、通信会社琉球アイコムの派遣社員として働いていた。
自分は何をすべきなのか、曾祖母の代から続く、豆腐屋をいづれは継ぐのか、漠然と日々を送る毎日。彼女の運命を変えたのは社内ベンチャー募集の告知、そして祖母をいつも仕事帰りに寄るバーでのラム酒との運命的な出会い。そして、ラム酒の原料が故郷の名産であるさとうきびということ、国産のラム酒はほとんど造られておらず、輸入品がほとんどといういくつもの偶然が重なって、まじむは純国産のラム酒を造るという事業を提案する。はたしてまじむの想いは叶うのか??
ラム酒は風の酒と言われるようにさとうきびが風によって育まれている作物。そして、この作品を読み終わったとき(読みだしたら止められなくなる)、なんとも爽やかで爽快感に包まれ、幸せな思いになった。沖縄や南大東島という南国の風土や人柄、そしてまじむのまっすぐな思い、全てがよかった。
この作品は実際に南大東島でグレイスラム㈱という会社を立ち上げた1人の女性をモデルにしており、コルコルという商品を販売している。
ラム酒のイメージはお菓子やラムレーズンに使われているイメージが多かったが、この作品を通じてラム酒を飲んでみたくなったし、お酒についてもっと知りたくなった。
普段は、たまにビールを飲む程度で他のお酒はたまに街で飲む程度。
正直、名前は聞いたことがあっても醸造酒と蒸留酒の違いもよくわかっていなかった。
醸造酒
日本酒、ビール、ワインが3大醸造酒だが、発酵方法も原料の違いで単発酵(ワイン)、複発酵(ビール)、並行複発酵(日本酒)とあるよう。要はワインはブドウが減量だが、果糖があるため、酵母があればよいが、ビールは大麦で、日本酒は米という元々に甘みがない分工程が複雑になるよう。
蒸留酒
焼酎、ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、ラム、ジンなどをいう。
原料を発酵させた後、蒸留。醸造酒を加熱し蒸発、それを冷やし、濃度の濃いアルコール分を中心に液体を集める。
この工程を知ると、醸造酒より蒸留酒の方がアルコール度数が高いのも納得できる。
世界4大スピリッツ(=蒸留酒)がジン、ウォッカ、テキーラ、ラム。
ジンとウォッカの原料はほぼ同じで大麦やじゃがいも、ライ麦といったもの。
ジンはオランダで薬用酒として造られたので、薬用成分を加えているため鈍い切れ味、広がる香りが特徴。
ウォッカは蒸留した原酒を白樺の炭によって濾過させているのでクセが少ない。
ラムの原料はさとうきび。
ラムの種類
ラムの種類にもいくつかあり、ホワイト・ラム、ダーク・ラム、ゴールド・ラムなどがある。ホワイトラムは無色透明で、ダークラムは内側をこがした樽で貯蔵、ゴールドラムはカラメルなどで着色。
また精製過程でさとうきびのしぼり汁から結晶化させた精製糖を採取した糖密と呼ばれる残りの汁を原料として発酵・蒸留したのがインダストリアル・ラムといわれ、一般的に販売しているものはこちらが多いらしい。
アグリコール・ラムはさとうきびのしぼり汁をそのまま水でうすめて発酵しているので、旨味や香りは強いらしい。
ラムで作られるお酒で有名なのは「モヒート」。本作の中でも登場する。
材料
・ミントの葉
・ライム(もしくはレモン)
・砂糖
・ラム酒
・ソーダ水
モヒートの由来はイギリスの女王エリザベス1世がスペイン領を略奪するために海賊達の手助けをしていた16世紀後半、海賊フランシス・ドレークの部下リチャード・ドレークが1586年にモヒートの前身となる飲み物「ドラケ」をキューバ人に伝えたことによる説が有力らしい。
グレイスラム(株)
風のマジム