本好きナースマン

色んな本を読んで日々の生活に潤いを与えています。目指すは年間100冊読了。

こちらあみ子 今村夏子

 

こちらあみ子では、まずなんとも言えないなつかしさを感じました。

広島が舞台であり、作中は広島弁で進んでいきます。私の生まれは島根の石見地方で広島弁とは若干の違いはあるものの、言葉や語尾の使い方などは似ている所が多かったからです。

作品としてはあらゆる視点でとらえると、あみ子という1人の少女から見れば、一途の想いを持ち続けるピュアな少女ともとれる。

しかしながら、おそらくあみ子には発達性障害のようなものを抱えていると思われるが、一途を貫く事で周囲の事には気づかない、おそらく気づけないという事もあり、おみ子の一挙手一投足に振り回され、家族の精神が壊れていき、母も兄もみんなおかしくなっていく。しかし、あみ子自身は自分が原因ではなく、周りが壊れているという認識であり、視点の捉え方でいくと色んな感情が芽生える作品であると感じた。

 

それは同じく本作内のピクニックという作品もそうである。

ピクニックという作品はルミという人物視点で話が進んでいく。

ある日、七瀬さんという人物がルミのアルバイト先にやってくる。七瀬さんは今、人気のお笑い芸人と実はお付き合いをしているという話をする。出会いなどの話も登場し、ルミたちは忙しい芸人と付き合っているという七瀬さんを一生懸命応援し、テレビの前で一緒に見たり、その芸人が川で落としてしまった携帯を七瀬さんが拾うために、一緒に川に行き、応援する。しかし、忙しい彼とはだんだん会えなくなり、彼は別の女性と結婚することになり、七瀬さんも落ち込んでおり、それを皆で励ましてあげるという視点での物語が軸になっている。

しかし、その視点こそがポイントで、読み手にとっては話の中心にいる人物に感情移入しがちであるが、本作でも視点を変える事を意識するとなんとも辛辣な作品になる。それこそが今村さんの作品のすごいとこだと感じた。1回目読んだ時、七瀬さんに虚言癖のようなものがあることには気づいたが、あくまでもルミという軸から物語を読み進めていたのでそこまで感じなかったことが、同じアルバイト先の新人の子からの視点を意識して話を再度読み返すと何とも言えない感情を持ってしまった。普段、1つの作品をすぐに読み直すことはないのだが、ピクニックに関しては連続して2回読んだ。

 

引き込まれる世界観に魅力を感じる作品でした。