本好きナースマン

色んな本を読んで日々の生活に潤いを与えています。目指すは年間100冊読了。

白銀の逃亡者  知念実希人

ドナルド・ミュラー症候群(通称:DoMS)

2016年に世界的に大流行した。日本でも感染したものの致死率は95%を超え、高度医療を受けられない国での死亡率は100%。

数週間の急性期を乗り越え、病状が急激に回復する変異期に入り、ヴァリアント(変異体)となる。ヴァリアントはホルモン変化により、虹彩が白銀に変化し、通常の人類を遥かに凌駕する運動・感覚能力を獲得するが、同時に紫外線に対して強いアレルギー反応を示すようになる。

 

岬純也もまた、DoMSに罹患した。罹患した患者は、憩いの森という施設に強制隔離されるが、岬は素性を隠し、医師としてこっそり生活をしていた。

いつものように夜間の救急病院で診療をしていると、岬に診察をしてもらいたいという、悠という少女と出会う。その悠もまたヴァリアントであった。悠は憩いの森から脱走し、公安に追われていた。純也は悠からある計画を打ち明けられる。

そして純也は、彼らの生存をかけた闘いに巻き込まれていく。

悠やその兄、比呂士、そして比呂士の計画に賛同し、協力するヴァリアントと同志の人間たちの計画とは?

 

コロナが世界的に大流行し、日本でもコロナ患者が出始めた頃、差別的な発言や言動は多くの所で聞かれた。今でこそ、元の生活に戻りつつあるが、本当の世界とこの本の中身がリンクすることが多くに非常に考えさせられる内容になっていた。

 

鈴木比呂士(悠の兄)がDoMSが流行りだし、ヴァリアントになったとき、少女を強姦し、警察官を殺したという報道が流れる。人々はその情報によってヴァリアントは危険で凶暴だというイメージが植え付けられた。そのため、憩いの森という場所に強制的にバリアントは集められることになった。

国が人間とヴァリアントを分けるという方法をとったのだ。

比呂士は本当に強姦をしたのか?警察をどうして殺したのか?その真実が明らかになるとき、悲しくも切ない。そして、怒りなど色んな感情が沸き起こる。

そして、これは本当の世界でも十分にあり得ることだとも思えた。

医療×エンタメ。知念ワールドに引き込まれる作品です。