本好きナースマン

色んな本を読んで日々の生活に潤いを与えています。目指すは年間100冊読了。

しろがねの葉  千早茜

昨年の直木賞受賞の本作。

舞台は島根県石見銀山

著書の千早さんは北海道出身。そんな千早さんがなぜ昔の石見銀山を描いたのか興味がわいた。

私は島根県浜田市という町で生まれた。石見銀山がある所は浜田から東へ江津市大田市と進み、その山間にある。

そんな私は今北海道に住んでいる。なんだか不思議な縁を感じ本作を読んだ。

世界遺産も好きで、石見銀山世界遺産に登録されたころ、地元に帰ったついでに一度足を運んだ。当時はシャトルバスも出るなど観光客で賑わっていた。それこそ、本作の中でも登場する、江戸幕府の管轄になり、町が銀で栄え、たくさんの人が集まってきた頃のように。

石見の銀は当時、世界の1/3もの産出量をほこったと言われ、昔の外国の地図にも載っていたほど。金や銀はそのもの自体の希少性から価値が高く、みんな目の色を変えた。銀が出れば町は潤う。

この話に出てくる山師、喜兵衛は天才だった。その山師に拾われたウメ。

喜兵衛は山の鉱脈を探る天才、しかし、気候や山の事も考えながら採掘の指示をしていた。しかし、戦国末期が終わり、徳川時代の到来で街の様相は変わる。そして、間歩の掘り方も全て変わっていく。そんな現状に喜兵衛は意気喪失していく。山師として憧れを抱いていたウメ。間歩はおのこの場所、おなこであるウメ。成長とともに、幼女だったウメは確実におなことして成長し始める。山に入れない悔しさ、おなこになっておのこに屈辱され、ウメは生きる意味を問うていく。

そして、間歩に入るおのこたちもまた、日光に当たらず、鉱物を吸っての採掘で平均寿命は30歳、最後は血を吐きながら弱って死んでいく。そんな、銀山での女、男たちの物語。

昔は1つの山を越えるのも命がけ、生きるために掘る、町が栄えるため女は子供を産む。激動だった時代が思い浮かぶ内容になっていた。