本好きナースマン

色んな本を読んで日々の生活に潤いを与えています。目指すは年間100冊読了。

肉弾 川﨑秋子

大学を休学している貴美也は、父親とともに北海道へ鹿狩りに連れだされる。

そんな父は摩周湖のほとりから、草むらの中に入っていく。熊が出るという情報を得て、父は熊を狩ることを目論む。しかし、その目論みは叶うことなく、あえなく熊の餌食となり、熊に腹を切り裂かれ殺されてしまう。そんな姿を目の前で目撃し、父親に反発しながらも庇護下におかれ、育ってきた貴美也は複雑な感情を抱く。

しかし、熊の次の狙いは当然、目の前にいるもう1人の人間。貴美也に絶対絶命の危機が訪れる。その時、熊に襲い掛かる野犬の姿があり、その群れに紛れ、運よく生き延びることができた。絶望の中、貴美也は生きるために戦うことを決意する。敵は熊に野犬。そして、野犬たちもまたそれぞれの物語がある。本来、犬がいるような場所ではない所になぜ野犬が住んでいるのか、野犬たちの過去も物語が進むにつれて明かされていく。そして、1人の人間との戦いの後で、野犬と人間との間には見えない繋がりが生まれ、嫌っていた「人間」という存在について考えることになる。

人間と動物、生と死、力強い描写で描かれる作品で、とても面白かったです。