本好きナースマン

色んな本を読んで日々の生活に潤いを与えています。目指すは年間100冊読了。

同志少女よ、敵を撃て 逢坂冬馬

作者の逢坂さんは本作で第11回アガサ・クリスティー章を受章してデビュー。

2022年本屋大賞受賞。

 

1942年、独ソ戦は激化。モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの生活は、急襲したドイツ軍によって、母親をはじめ村人たちが殺害された事で一変する。

自らも殺害される直前、赤軍のイリーナに救われる。彼女は、同じ境遇で家族を失った女性たちと女性狙撃手としての訓練を受け、戦地に赴くことになる。

彼女が戦いの果てに辿りつく場所とは??

 

なかなかの長編ですが、とても面白かった。

舞台はWWⅡで、日本でいうと日独伊VS連合国軍という感じで歴史を習ったと思います。その頃の独VSソ連の戦地を舞台に物語は繰り広げられていきます。

そして、女性の狙撃手というのは実際に存在したというのです。

本作にも登場するリュドミラ・パブリチェンコはソビエト連邦の軍人で、ソビエト赤軍が数多く登用した女性狙撃手の中でも、確認戦果309名射殺という傑出した成績を残した史上最高のスナイパー。

ja.wikipedia.org

人を殺害するのはよくない。それは明白の事実であると感じる。しかし、それは今の日本が平和であり、WWⅡの敗戦の果てに辿りついた結果だろう。

今、ロシアがウクライナ侵攻で多くの犠牲者を出している。ロシアの言い分やウクライナの言い分があるのも分かる。しかし、事実としてはっきりしている事は多くの尊い命が亡くなっているという事だ。

WWⅡでは全世界を巻き込みんだ。日本もまた、原爆などによって多くの命を失った。しかし、多くの命を奪ってもいる。加害者であり、被害者なのだ。

戦争がだめという事はわかる。しかし、もし自分の家族や大切な人が殺されたらどうするか。相手を殺してやりたいほど憎むと思う。法律という規制がなければ、おそらく自らの手で仇をとるのでないか。人はそうして争ってきたのだと思う。愛する家族や仲間、大切な土地を守るために。

だからこそこうした問題にただただダメという事で片づけるのではなく、どうしていかなければいけないのかという問題意識を自分に問い、自分なりの答えを見つけていく事が大事なのかなと思う。

 

今回の作品の主人公であるセラフィマは愛する家族や村を破壊され、復讐を誓う。そして、仲間たちも家族を失ったという共通意識によって強い仲間意識が芽生える。10代の女の子が強い覚悟を持って、訓練を行い、目の前でバタバタと人が死んでいく戦火で自分も狙撃手として人を殺める。すごい精神力だと思う。

作品を通して色んな事を考えされたし、今のロシア、ウクライナの問題にもつながるの

で是非読んでみてほしいと思います。なぜ、ロシアがウクライナを欲しがるのかなども歴史的な部分や地理的、産業的な面から見ても理解できるような気がするので、そうした側面からニュースを見ると感じ方も違うのかなと思います。