罪の余白 芦沢 央
芦沢 央(あしざわ よう)さんは1984年の東京都出身で自分も1984年生まれなので勝手に親近感を覚えています。
高校時代(2000年頃)デビューまで12年間、雑誌投稿や文学賞への応募を続け、2012年本作「罪の余白」でフロンティア文学賞を受賞され、小説家デビューを果たす。
安藤の娘、加奈が学校で転落死した。妻を癌で亡くしてから1人で加奈を育ててきた。どうして加奈が死ななければいけなかったのか。クラスメイトからの手紙を受け取った安藤の心には、娘が死を選んだ本当の理由を知りたいという気持ちが芽生える。
そんな折、加奈の友人だという少女が自宅に弔問に訪れる。少女は親友だったと。。
その頃、安藤は娘の日記を探していた。日記には友人からのいじめの内容が綴られていた。娘を思うあまり、父は怒りに任せ暴走する。
本作は主人公の安藤聡、娘の加奈(自殺するまで)、安藤の同僚である小沢早苗、加奈のクラスメイトである木場咲、新海真帆の計5人による視点で物語は進んでいく。
それぞれの胸の内の苦しみも吐露されつつ、人間の世界で生きることの難しさを描いている。特に安藤聡以外はすべて女性であり、特に女性の世界で生きることの難しさを描いている。空気を読むこと、グループに属することなど、言い方は失礼かもしれないが生々しい生きづらさを表現しており、男の世界とはまた別だなと感じる。
高校生たちの世界で行った1人の少女の死を中心に、周囲の人間の苦悩を巧みに表現しつつ、復讐を誓う父、物語の行きつく結末とは・・
感情的な表現が多い文体で読みやすく、話の世界に自分も入ってしまうような作品でとても面白かったです。