機械仕掛けの太陽 知念実希人
看護師として働いて、コロナ禍を過ごしてきました。
みんな自分に余裕がなくなりました。
マスクの徹底や消毒、三密の回避など、できることは徹底し、病院での食事会は現在進行中でなくなり、つい最近まで市外に出るにも上司へ報告、不安なら検査の実施。面会もいまだに中止のままでオンラインで面会するのみ。そうした対策を3年弱・・・
それでもうちの病院でも院内クラスターが起きました。時期は違えど、全ての病棟で起き、閉鎖期間中は本当にしんどい思いもしましたし、院内クラスターが起きた最中、自分自身もコロナに感染してしまい、仲間に負担をかけたことに申し訳ない気持ちになりました。うちの病院は急性期ではないので、コロナ病棟などはありませんでしたが、自分たちの病院を患者を職員を守るという事に注力してきました。
今回、本作を読み何度泣いたか。最前線で戦っている人たちの苦労が本の中から伝わり、それを取り巻く家族たちの苦労。心も体もすべてが疲れ果て、それでも世間から医療従事者というだけで、自分や子供が白い目で見られたり、人を助けるためにワクチンを接種しているのに、人を殺すためにワクチンを打っていると一部の反社に罵られたり。
今でこそ、2類から5類に引き下げられ、国民の大多数か何度かのワクチン接種を打っている事によって、少しずつ日常が戻りつつあるけども、相手はただただ増殖するためのプログラミングをされた有機機械のウイルス。
本作では野生株、α(アルファ)、β(ベータ)、ο(オミクロン)の時に2年余りを作品として紹介されていた。
大学病院の呼吸器内科で勤務する椎名梓、同じ病院に勤務する20代の女性看護師、硲瑠璃子(はざまるりこ)、引退間近の70代の町医者である長峰邦昭の3人の視点で物語が交互に進んでいく。まさに戦場と化した医療現場のリアルを描いた作品で、読んでみることをおススメします。