コンビニ人間
2016年、第155回芥川賞を受賞。
村田沙耶香著。
コンビニバイト歴18年の主人公の話。全部で160ページほど。
軽快な文体で読みやすく、それでいてとても考えさせられる内容だった。
私にとっての普通は、相手にとって非普通かもしれないし、世の中から見れば異物なものなのかもしれない。けれど、私たち人間は「普通こうでしょ」など当たり前に普通という言葉を使う。そして、私個人的な感想としては日本人は特に普通という言葉を用いて教育を受け、ぼやーっとした普通という世の中で普通らしく生きる事を求められるような気がする。そうしなければ普通という世の中から排除され、生きづらくなってしまうから。
主人公の恵子にとっての普通は普通ではなかった。そう、小学校時代に教え込まれたのである。
死んでいる鳥を見て、同級生は泣いており、かわいそう。親もかわいそう、お墓に埋めてあげようという。しかし、恵子は親に持って帰って食べよう。お父さんも焼き鳥好きだし、みんな鳥の唐揚げが好きだから。と考える。
とても考えさせられる。物がない時代の日本であったら受けいれられたのでは。現代でも紛争が絶えず食糧不足に陥っている国ではきっと当たり前に食べるのではないか。
普通って一体何だろう。その時代、場所、時間、同じ事でも条件が違えば普通が普通でなくなる。常に普通を探し、そのぼやーっとした普通という容器に飛び乗って、遅れて乗車できない人間は社会不適合者のような好奇な目で見られてしまう。
作者は、恵子とその取り巻く環境を題材にし、我々読者に対して普通とは一体何かを問うている気がした。とても面白い作品でした。現代においては、男女間におけるジェンダーレスや、ネット社会の普及により、周囲とのコミュニケーションを苦手とする人でもネットビジネスなども多く、個人としての生き方がより尊重される時代に移り替わりつつあると思います。しかし、まだまだ男なら女ならとか若いんだからとか性別や年齢やハンディキャップに対しての差別意識が日本には特に強くあると思います。
この作品を通して、色々考えるきっかけになりました。是非読んでほしいと思います。