本好きナースマン

色んな本を読んで日々の生活に潤いを与えています。目指すは年間100冊読了。

本日は、お日柄もよく  原田マハ

好きな作家の1人でもある原田先生。

以前、風のマジムや旅屋おかえりを読了した時にも感じた読み終わった後の爽快感や幸せな気分。芸術系の作品も得意とする原田先生ですが、個人的にはこちら側のジャンルが好きです。1人の女性が軸になることが多く、昔からの男尊女卑のような社会の風潮の中で、頑張る女性がたくさんいて、そんな女性をもっと応援したいし、女性だけに負担をかけるのではなく、男の理解がもっと必要で、家事も育児ももっともっと協力ではなく自分事のように行う。そうすることでもっと男女平等の世の中がくることを願ってやまないです。

 

さて、今回の作品では老舗製菓会社でOLをしている二ノ宮こと葉。こと葉は結婚式で感動的なスピーチをする久遠久美という女性に出会う。

今回の作品で言葉には心がある。と感じた。ChatGPTなどIoTやAIはどんどん進化しており、いつの日か心を持った機械が現れるかもしれない。しかし、どんなに進化しても人と人との間に流れる空気や間、心のある言葉。それは取って変えることのできないものではないだろうかと思う。心からあるから人は言葉に傷つくし、感動をもする。同じような傷つく言葉を機械から言われても、そこまで傷つくことはないだろう。それは、人と人との間に流れる心情があるからだろう。

そう感じずにはいられない作品であり、本作の中でもたくさんの素晴らしい文や言葉が出てきた。そして、話す人、聞く人との間に流れる空気のようなものが暖かく、まるで自分のその世界に入りこんでしまい、その場にいるみんなとともに感情を共にしたような感じだった。おかげさまで本を読み終わるまでの間に何度泣いたことか。

素晴らしい作品でした。

内容として、久遠久美に出会ったこと葉は私と同じように言葉に魅了され、OLの傍らスピーチライターとしての仕事を学ぶ。

幼馴染みの今川厚志は大手広告代理店に勤めていたが、亡き父、元民衆党の幹事長の篤郎の思いや、民衆党の党首小山田の思いを受けて衆議院選に立候補することに決める。その厚志をサポートするため、こと葉は一念発起し会社を退職、スピーチライターとして専念することにする。相手は現与党の厚生労働大臣の黒川。巨大な相手にこと葉、厚志はまっすぐに、政権交代を目指し立ち向かう。

涙涙の物語。その結末はいかに!?

ぜひ読んでみてください。これまでたくさん本を読んできましたが、ベスト5に入るほど好きな作品でした。

 
ちなみに本作品の中で思わず、泣いた名言を紹介。
亡き今川篤郎が15歳の時、両親を亡くし孤独になってしまった久遠久美に対して伝えた言葉。
 
「なぁ久美ちゃん。困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。
三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩きだしている。
どうだい?そんなに難しいことじゃないだろ?だって人間は、そういうふうにできているんだ。
とまらない涙はない。乾かない涙もない。顔は下ばかり向いているわけにもいかない。歩き出すために足があるんだよ。
君のお父さんとお母さんが君に与えてくれた体を、大切に使いなさい。そして心は、君自身が育てていくんだ。大らかに、あたたかく、正義感に満ちた心に育ててやりなさい。そして、成長してほしい。」
 
心の奥深くにすっと入ってくる言葉。他にも多数、胸打たれる言葉があります。