本好きナースマン

色んな本を読んで日々の生活に潤いを与えています。目指すは年間100冊読了。

さいはての彼女  原田マハ

あまり知らない珍しい名前に興味が沸いた。

もちろん、知っている方にとっては有名な方だと思うが。

1962年東京生まれ。2005年「カフーを待ちわびて」で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。2012年「楽園のカンヴァス」で第25回山本周五郎賞を受賞。

 

今回、読んでみたのは「さいはての彼女」

短編集になっており、全部で4編で構成されている。どれも主人公は女性。

 

1.さいはての彼女

主人公は涼香という女性起業家のお話。ある1人の少女と出会う事で涼香の心の中で強張っていた部分が、ゆっくり解れていく。この解れていく部分の展開が実に爽快で、舞台となっている北海道の道東という広大な大地と実にマッチしていた。

 

2.旅をあきらめた友と、その母への手紙

3.冬空のクレーン

4.風を止めないで

 

3は釧路から鶴居を舞台にしており、釧路に住んでいる自分にとっては、描写される風景が目の前に浮かぶような感じであり、好きであった。

 

4の主人公は1のさいはての彼女に出てきた少女の母からの描写となっている。

1と4に出てくる少女凪。ハンデを抱えながらも前に進む力強さは、今、コロナ禍において心の中が強張ってる現代人の心の中にすっと入ってくると思う。

今は苦しい、自粛、自粛。生活にも余裕がない。余裕がなく、人と人とはソーシャルディスタンス。しかし、心までソーシャルディスタンスになってきていると感じる。政府の対策や行動に憤りを感じるのはごもっともで、偉い人がしているんだから自分たちもいいんだと外出や会食をするのでなく、自分なりに今、この現状でどう行動するのがベストなのかという事を常に考えてほしい。

万が一、自分がコロナにかかって息もできないくらいに苦しいとなれば、誰かに助けを求めるでしょう。そして、助かるために病院に入院したいでしょう。しかし、すべての病院がすべての医療スタッフがコロナに対応できる訳ではないという現状を知ってほしい。テレビでも民間病院がどんどん受けいれればいいなどとコメンテーターが述べていますが、現実的に可能ではない。

私は療養型の病院で看護師をしています。平均年齢は80歳をゆうに超えています。100歳を超える高齢の方もいらっしゃいます。万が一、ウイルスが入りこめば、あっという間に感染は広まり、多くの命がなくなるかもしれない。と、当院スタッフはそれぞれが自覚し、日々の生活を送っています。

もちろん外食や買い物をすることで経済が回ることは確かであり、否定はしません。しかし、目には見えないウイルスは知らないうちに体に入りこんでます。もし、自分に入りこんでいて症状がなくても、自分から親などの身内に感染し、肉親が命を絶たされてしまう状況になったら?という部分まで想像を働かしてほしいです。最後に辛い思いをするのは自分自身にならないために。

 

話はそれましたが、そんなストレスフルな状況下においてぜひとも読んでもらいたい1冊です。主人公たちの心が解かれていくのと同時に読み手の心も解かれる珠玉の短編集です。