本好きナースマン

色んな本を読んで日々の生活に潤いを与えています。目指すは年間100冊読了。

インフルエンス 近藤史恵

小学校2年生の友梨は、同じ団地に住む親友の里子が虐待されていることを知る。

誰にも言えないまま中学生になり、憧れの存在・真帆を救うため友梨は男を刺してしまう。しかし、捕まったのは里子。

不可解な事件が少女たちを繋げ、罪は密かに重なり合う。大人になった3人の運命が明らかにした驚愕の真相は!?

 

『インフルエンス』は1960年代後半に生まれ、80年代半ばに中学生になった3人の少女たちのサスペンスストーリーになっている。

1人が1人を守るために殺人を犯し、1人がそれを庇うことをきっかけに、誰にも言えない秘密を重ねていくことになる。

1980年代半ばというと、全国の公立中学校は校内暴力の嵐が吹き荒れた。教師が振るう生徒への体罰、生徒から教師への暴力、生徒間の苛烈ないじめ、当時は犯罪という認識は薄く、黙認されていたのが現実で、ドラマや本でも作品化されるものも多く、そういう時代だった、そういう文化だった少し美化されている所もある。

私自身は、1980年前半生まれで、小学校高学年の時に兄の中学に体育祭を見に行った時の記憶は今でも断片的ではあるが、強烈な印象として思い出すことができる。

1階部分の窓は割られ、各色の団長の頭はそれぞれの色に染められ、大きな旗を持ち、グラウンドを煽るように周回する姿には恐怖さえ覚えた。自分はまもなく、この学校に入学するのかと。田舎だったので、私立などもなく、選択肢はなかった。

幸いにも、当時のいわゆるヤンキーツッパリ文化は下火を迎えており、私が入学し、卒業するまでの間は、金髪、ボンタンといった姿をし、教師に反抗的な態度をとる生徒も何人かはいたが、恐怖はなかったし、話してみると案外、良い奴が多いのも確かだった。

このインフルエンスの作品にも中学で力で支配する生徒がおり、その生徒がふざけてダウン症の女子を嬲り殺してしまう。さすがに私の同級生ではそういう生徒はいなかったが、今、考えるとあの時代は今のSNSなどのいじめとは違うが、ある意味で見える化しており、制圧しやすかったのかもしれない。

 

この1冊を読むと、3人の少女の苦しみも含め、当時の時代背景なども思い起こすこともできる。どこか切なさもあり、庇う事で余計に苦しみが重なり、大人になっていく。

面白い作品なので、是非読んでみてほしいと思います。

 

2021年3月からWOWOWで放送されたよう。
橋本環奈ー戸塚友梨
葵わかなー坂崎真帆
吉川愛ー日野里子