桜木紫乃さん ラブレス
謎の位牌を握りしめて、百合江は死の床についていた。彼女の生涯はまさに波乱万丈だった。道東の開拓村(標茶町)で極貧の家に育ち、中学卒業と同時に旅芸人一座に飛び込んだ。一方、妹の里美は地元に残り、理容師の道を歩み始める。流転する百合江と堅実な妹里美の60年に及ぶ絆を軸にして、姉妹の母や娘たちを含む3世代の凄絶な人生を描いた圧倒的長編小説。
●標茶町
釧路の北部に位置する町。標茶(しべちゃ)という名前はアイヌ語の「シペッチャ」という発音がなまったもの。「大きな川のほとり」という意味で語源の通り、釧路川をはじめ、別寒辺牛川、西別川の三大河川により産業と開拓の歴史が刻まれている。
このラブレスという作品では、3世代に渡り描かれているので釧路周辺の街並みの変化も一緒に思い浮かべることができる作品になっている。そして、このラブレスという作品では釧路市内だけでも多くの場所が紹介されている。
①春採湖
百合江が運ばれたのは春採湖のそばにある高台の病院。これは市立釧路病院のことである。ヒブナの生息地として昭和12年に国の天然記念物に指定。
前の作品でも紹介しました。冬なので湖が見事に凍っていますが、湖の向こうに見えるのが市立釧路病院。
②ズリ山
ズリ山とは、石炭等の採掘に伴い発生する捨て石の集積場。今でも操業を続ける釧路コールマイン㈱からほど近い場所に位置する。
③清水理髪店(現在は駅前の補聴器店)
昭和35年、里美は釧路の清水理髪店に移る。当時の成長を続ける北大通にあり、当時はかなりの人気店であったという。
④釧網本線
⑤産業道路
⑥白山湯
大正元年創業。古くから北大通周辺で憩いの場として栄えた銭湯。昼間は天窓からの自然光が満ち、お客同士がとても仲が良いのが白山湯だったそう。今は閉店し姿をみることはできない。
⑦丸三鶴屋
私は釧路出身ではないが職場で昔の釧路の事を聞くと、北大通はたいそう栄えていて、その中でも丸三鶴屋といえば誰もが知っているお店だったよう。
昭和5年に開店。平成8年に丸井今井の子会社となったが、平成18年に釧路店の撤退が決まり、完全閉店となる。当時は本館と新館に分かれ、ショッピングの中心だった。
⑧金市館
⑨銀の目
1958年にオープンした、当時は釧路で初といわれているキャバレー。港町だけあり羽振りの良い漁師などの出入りも大変多く、にぎわいを見せていた。繁華街末広を代表する店舗であった。今はすでにない。
⑩栄町交番
⑪泉屋のスパカツ
釧路のソウルフードと呼べる一品。今でもよくテレビにも取り上げられている。アツアツに熱せられた鉄板の上に、太麺の麺とカツを乗せ、その上にミートソースがたっぷり。
釧路市内には本店以外にも、イオン釧路店、イオン釧路昭和店、スーパーアークス鳥取大通り店の中にもあります。
釧路を感じることができ、3世代にわたる女性たちの物語。桜木さんの作品の中でも好きな作品の1つです。ぜひ読んでほしいと思います。