本好きナースマン

色んな本を読んで日々の生活に潤いを与えています。目指すは年間100冊読了。

天使の柩  村山由佳

村山由佳さんと言えば「エンジェルス・エッグ」とすぐに思い出すくらい有名だ。

昔、読んだ記憶がある。しかし、内容についてはかなりおぼろげだ。

その天使シリーズの最終章にあたるのが今回の天使の柩である。

あいだに天使の梯子もあるそうだが、いきなり最終章を読んでしまった。

結論からいうと、最初の方は淡々と物語が進んでいく感じだったが、主人公の茉莉が歩太に過去の出来事を話す辺りなどは何度読み返しても切なく辛く涙が出てしまう。

そして最後の結末に向けて、茉莉は幸せをつかむことができるのか。

 

そもそも天使シリーズは

第一作の天使の卵。その作品は美術専門に通う19歳の浪人生、一本槍歩太を主人公に、歩太と年上の精神科医・五堂春妃の愛と青春と喪失を描いた物語。

第二作の天使の梯子では、春妃の妹で元高校教師の斎藤夏姫と恋に堕ちる教え子の古幡慎一を主人公に、慎一と夏姫の苦難を乗り越えた恋の情景が描かれた。

そして第三作にあたる天使の柩では主人公は14歳の天羽茉莉である。茉莉はネグレクトされた子供であり、フィリピン人である母や茉莉を生んですぐに母国に戻り、祖母は母に重ねて孫である茉莉を売女やバイタといった言葉で扱う。母を失った父はおかしくなり、茉莉の部屋の外に鍵をかけるといった行為を行う。そんな環境で育った茉莉は家にも学校にも居場所をなくし、自分を愛せなくなっていた。

そんなとき、かつて最愛の春妃を亡くし、心に癒えない傷を抱え続けてきた画家・歩太と出会うことになる。20歳年上の歩太と出会い、茉莉は生まれて初めて心安らぐ場所を手にする。2人は共に「再生」への道を歩むが、茉莉が付き合っているタクヤの思惑などによって大きく歪められていく。2人の再生は叶うのか。

全300ページほどの作品。後半にかけてじっくり言葉を楽しみながら丁寧に読みたくなる、そんな印象の作品でした。そして、1作目も読み返そうと思いましたし、2作目も読んでみようと思います。

天使の卵 エンジェルスエッグ 第6回小説すばる新人賞受賞作品。
天使の梯子  星々の舟で直木賞を受賞後、1作目となったのが天使の梯子
天使の柩 天使の卵から20年、感動の最終章。