本好きナースマン

色んな本を読んで日々の生活に潤いを与えています。目指すは年間100冊読了。

それ自体が奇跡  小野寺史宜

夢と私がどっちが大事??

30歳、結婚3年目、共働き。子供はいない。

田口貢と綾。2人に訪れる試練。

会社の同僚であった貢と綾。

 

貢は会社のサッカー部が廃部になりくすぶっていた貢は、大学の先輩から「カピターレ東京」で東京23区初のJリーグ入りを共に目指そうと熱心に勧誘される。報酬0。しかし、本気のサッカーへの誘いに心を動かされた貢は、綾に相談することなくその場で「やります。」と返事をしてしまう。

 

高卒で百貨店に入社し13年目の綾。結婚して3年、そろそろ子どももほしいと考えていた綾は、夫の突然の宣言に異を唱える。特に嫌だったのが、相談ではなく事後報告であったこと。そんなとき職場の売り場に買い物に来ていた客の天野と知り合いになり、2人で映画を観に行ったり・・・。

 

貢と綾。2人が交互にメインになり、双方の視点から物語が進み、1年が流れていく。

男と女、夫婦の気持ち。結婚自体が奇跡の事だとしても、結婚ししばらくするとその事実は普段の忙しさや気持ちのすれ違いなどで忘れていく。愛し合ったはずなのに。

1年後、2人はどうなるのか?

 

私の命はあなたの命より軽い  近藤史恵

以前、近藤さんのインフルエンス拝読。今回、タイトルに惹かれ読んでみることに。

遼子は出産を間近に控えていた。夫、克哉と共に初めての出産に向かっていると思っていた。ある日、夫は会社からの命令で半年間のドバイへの赴任を命ぜられる。

遼子は不安を口にし、できれば赴任してほしくないと願う。しかし、克哉と言えば会社からの命令とはいえ、どこか出産に対して、短絡的で実家にお願いしてみたら?軽い口調でいう。そんな克哉の姿にどこか不信感を抱きつつも、1人での出産は不安なため、大阪の実家に電話することに。母は妊娠に対してとても喜んでくれていた。そのため、急遽決まった実家への帰省も断りはしないだろうと考えていた。電話で母に報告すると、少し考えさせてほしいとの返事。電話先での違和感を感じた遼子。数日後、母から了承の電話はあった。しかし、電話で話した件以来、違和感のようなものを感じつつ帰省することに。そして、その違和感は徐々に現実のものになっていく。仲の良かった家族だが、実家に帰ってからというもの、常に違和感がある。母、父、そして妹の美和。その3人の態度や言動にどこか違和感がつきまとう。なぜなのか?そして、新築して1年も建たない家を急いで売却しようとしている父。そして、美和はこんな家売れる訳ないと。

遼子が結婚を機に東京を行ってから家族に何があったのか?年の離れた妹の美和はいつも姉の遼子を慕いついてまわっていた。父も美和にべったりであった。それが、今では口数も少ない。実家にいる間に遼子は旧友などと再会する内に徐々に過去に起きた事件を耳にすることになり、そしてそれが我が家に関係している事を知る。事件の結末に近づくにつれ、驚愕の事実が明らかになっていく。

そして、タイトルの「私の命はあなたの命より軽い」に込められた事件の真相も明らかになる。命は平等ではないのか?

ページ読む手が止まらなくなる本です。

 

愚者のエンドロール  米澤穂信

文化祭に出展するクラス制作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。

映画のラストでは廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。

誰が彼を殺したのか?その方法は??

しかし脚本を担当した本郷は体調を崩し、途中まで書いた後倒れてしまった。

途中までの作品を見た古典部の伊原、千反田、福部、折木の4人はこの物語の続き、結末を予想してほしいと。

クラスの証言などをもとに事件の結末に向けて推理を考える。

辿り着いた事件の結末とは?そして本当の結末に隠された秘密とは?

 

希望が死んだ夜に  天祢涼

天音さんの書籍初めて読みました。

ラストは切ない。泣けます。

 

14歳の女子中学生が、同級生を殺害した容疑で逮捕された。殺人をしたことは認めたが、なぜか動機は話さない。

 

希望の希がねがうとも読むことから名づけられた、冬野ネガ。

県警本部の真壁と多摩警察生活安全課の仲田という異色のコンビがその事件に迫る。

真壁は上から完落ちさせることを期待されており、早く事件解決をしたいと目論む。しかし、仲田は相手は中学生。相手の気持ちを想像しながらではないと本当の動機についてはわからないと話す。ネガは真壁の取り調べに黙秘を貫く。

48時間以内に検察に送検しなければいけない。時間はない。

真壁と仲田のコンビはネガの周りの人間関係について調べていく。

そんな中、徐々に明らかになっていく事実。

殺害された相手は春日井のぞみ。のぞみはクラスでも人気のお嬢様で優しく面倒見もよく、吹奏楽もできていわば優等生。ネガは貧困家庭で育ち、性格も暗く、クラスでも存在感がない。ネガとのぞみ。名前に共通点のある2人。2人の接点はいかに。そしてネガがのぞみを殺害したのか?動機は何なのか?もしネガが殺していないとしたら真犯人はいるのか?

青春を見事に描きながらミステリーもあり、ラストの真相は涙なくして読めない。

文体は読みやすくとても面白かった作品です。

 

彼女の背中を押したのは  宮西真冬

宮西さん1984年生まれで同い年。親近感沸いて初めて読んでみました。

梢子は結婚を機に働いていた書店を辞め、夫とともに東京で暮らしていた。

半年後のある朝、妹のあずさから相談したいことがあるとメールが届いていた。

梢子はメールに気付いていたが、過去のわだかまりもあり、すぐに返信はしなかった。そうこうしている内、その夜、母から電話であずさが建物の屋上から落ち、意識不明の状態であると告げられる。

あずさがメールで相談しようとしていたこととは?

何かに悩んでいて自殺を図ったのか?それとも??

 

母の妹に対する過剰の愛情と期待、それに相反するように姉の自分には期待はされず、勉強や家事を押し付けられる日々、父の無関心、そうした家族の交錯する思い、過剰な期待に応えられず、引きこもりがちになってしまった妹。妹は生きづらさから死を決断したのかもしれないと梢子は実家に戻り、同僚たちに話を聞いて回る。徐々に近づく真実、そして梢子の知らないあずさの一面も見えてくる。

家族とは何か?生きる辛さや生きる意味を問われる作品であり、読んでみる価値ありです。

 

女は筋肉、男は脂肪  樋口満

日本人の体力は20年前に比べ右肩下がり。大人も子供も。

しかし、60~70歳代では男女とも向上している。

病気や死因、筋量、持久力、柔軟性、脂肪量など男女の間には多くの差異がある。

科学的な根拠をもとに、男女別の運動法や食事術を紹介。

気にすべきことは、女は筋肉をつけること、男は脂肪をおとすこと、その理由を本書で紹介してくれている。

 

ジュニア世代からしっかりと筋肉づくりをし、ミドル以降のサルコペニアロコモティブシンドロームに備える、男性はミドル世代で体脂肪量を減らし、メタボリックシンドロームの予防に努めることが大切と著者は述べている。

 

ツツヌケ  七瀬晶

タイトルのごとくAI機器がもたらす便利さとその危険さについて考えさせられる内容であった。

著者の七瀬晶(ななせひかる)さんは青山学院大学理工学科を首席で卒業、IT企業にて各種システム開発をてがける。ITミステリーから時代小説まで幅広く手掛けている。

 

辻井未来は介護センターで派遣のヘルパーをしている。あるとき、一人暮らしの利用者の家に、夜中、何者かが侵入するという事件が起きた。

同僚のヘルパーである晴馬が暗視カメラを置いてみることを提案。ほどなくして犯人は判明する。未来はAI機器の便利さに触れ、普段1人の時間にさせている小学2年の娘、茉優を心配し暗視カメラを自宅にも導入することに決めた。

しかし、ネットハッキングにあい、自宅での映像が世間に流れたりとその利便さとは裏腹にネットに潜む危険性にも触れる。そんな中、茉優の姿が突然消えた。

犯人は誰か?人間の内に持つ愛憎とAI機器がコラボした緊迫のサスペンスここに開幕。

全250ページほどで比較的読みやすかったです。モラハラ、シングルマザー、AI/IoT、SNSなど現代の問題が多くミステリーとして読みながらも考えせられる内容も多く面白く読むことができました。